私たちの生活する神ノ郷地域は弥生遺跡を始め、式内社としての赤日子神社(*)、そして中世築城の上ノ郷城など、先人たちが地域固有の生活を営んできた確固たる証をここそこに見い出すことができ、他に誇れる地域であります。このような地域に由来をもつ私たちは、地域のありようをより深く理解し過去への思いを高めることで、先人や地域を愛する気持ちが育まれていくと考えます。それは同時に、地域のよさを次代につなぐ力でもあります。
その期待への思いをこめ上ノ郷城跡保存研究会では、平成30年2月実施の枝垂桜の記念植樹に引き続き、以下の通り『水仙の花いっぱい活動』を計画しました。
*927年「延喜式神名帳」に登載されている全国2861社のうちの1社
上ノ郷城では、平成18年度から城の実態把握のために発掘調査を実施しています。平成27年度までに合計8回調査を行い、主郭、東郭、北郭の様子が明らかになってきました。
主郭では、石組みを仕切りとして、西から東へ5つの区画に分けられていたことが判明しました。また、石を四方に配した四角い穴からは、素焼きの皿34枚が重なって出土しました。調査では、煮炊きに使った土器や金箔を施した飾り金具など、当時の生活の様子が分かるもののほか、鉄砲の玉2点など、戦いの様子を示すものも見つかりました。
東郭では、郭として使われる以前に、大きな堀があった事が確認されました。岩盤を削りだした堀の深さは2.5m、主郭からの高低差は10mで、60度の傾斜がありました。上ノ郷城が非常に守りの堅い城であった事が分かる発見といえるでしょう。
発掘調査終了後、調査区は丁寧に埋め戻され、地中に大切に保管されています。
市教育委員会の助言・協力のもと、遺跡の修復を含め関連整備事業・活用事業・教育活動推進事業及び広報啓発事業を実施・継続することで、市民・町民に対し貴重な歴史的遺産としての価値を啓発し、城跡を広く市民交流の場に育てていくと共に保存に向けての意識高揚を図る。
①整備保存事業について
町民・市民が城跡に足を運びその地に馴染むことが、史跡保存活動の第一歩。そのためには、人が集える施設を設置し環境を整え、史跡公園化に向けての魅力を高めていくことが重要である。
②活用保存事業について
上ノ郷城跡保存研究会(以下「保存研究会」と呼ぶ)は、城跡の景観のよさや立地のよさを生かしての文化的行事や体育的行事を公民館活動や各種団体・サークルなどと協力・連携して実施する。一方、市内各種団体の城跡活用事業に対しても、積極的な支援や協力に努める。
③教育活動推進事業について
蒲郡西部小学校においては、6年社会科の歴史学習においてすでに教材化が進んでいるところであるが、保育園を含め近隣小中学校の校外学習などにも活用が図られるよう①の保存整備事業の充実を図る。また、直接の学習指導に当たっては、市博物館学芸員の協力を得たり、求めに応じて資料の提供や講話などを実施したりする。
④広報啓発事業について
月1回発行の「公民館だより」を活用し、当面城及び地域にまつわる史実や伝承等を随時掲載し、町民の歴史に対する興味・関心を高めるよう工夫をする。また、ホームページの立ち上げや掲示板等の充実を図り、多様な情報を広く配信できるように工夫する。
〇関係各位のご尽力により、現状の保存研究会が、恒久的な保存活動の推進母体として定着し発展してきている。
〇この保存研究会は、常に神ノ郷町総代区と柔軟な連携と協力関係を得て、定期的な整備・活用事業を継続実施してきている。さらなる事業の発展においては、今後ますます総代区との連携・協力が不可欠となる。
〇この貴重な歴史遺産を次代に引き継ぐことを前提として、これまでの保存活動の経緯を踏まえつつ、町内に限らず全市的な視野に立ってその構想づくりをしていく組織を『上ノ郷城跡保存記念事業準備会』とし、そこでのねらいや方針を受けて保存研究会が具体的な内容を立案・実施する。